レポート

物流業界の現状と課題解決に向けた当社取組み

2019/04/01

執行役員 田頭 宏則

 物流は東日本大震災をはじめ、日本各地で発生する自然災害時の影響を受けて、いまやライフラインとして国内でも広く認知されている。近年、日本では消費者が多様なライフタイルを志向し、利便性の高いECでのモノ・サービスの購買が増大し続けている。その一方で人口減少に伴い、物流企業全般でヒト不足が加速し、輸配送の需給バランスが崩れ、その影響が顕在化したのが2017年の宅配クライシスである。多数のメディアに取り上げられ、国民の多くが物流業界の抱えている課題を知る契機となった。この物流業界の苦境に対する世の中の理解が進むと共に、宅配事業者の総量抑制や料金値上げ等の効果もあって、一旦、落ち着きを取り戻しつつある。今後、物流業界には更なる消費者の多様化するニーズに対応しながら、輸配送の仕組みを急速に高度化・効率化していくことが求められている。

 EC化率(BtoC)という観点では、経済産業省の市場調査等によると、2017年頃に日本は約6%であるのに対し、中国は約16%と急成長しており、1日に輸配送される荷物量は日本の約7倍にも及ぶ。そのEC先進国である中国において、実は日本における宅配クライシスと同じ状況が数年前に起こっていたが、労働力のクラウドソーシングを宅配業界に活かす取組み等により、この問題を解決している。同様に日本国内においても、物流における輸配送の効率化と労働力不足の補完を実現するため、ラストワンマイルの課題解決に向けた様々な取組みが始まっている。具体例としては、宅配ロッカーの普及(マンション/戸建て向け)、宅配ロボット/ドローン配送の実用化検討、宅配版クラウドソーシング、格安宅配サービス事業者の誕生、などが挙げられる。物流事業者以外の異業種を含めた様々な取組みにより、利用可能な宅配サービスの選択肢は広がりつつあり、今後、日本国内において、宅配利用者が品質や料金を含めたサービスレベルを自由に選択する時代にシフトしていく可能性が高いと考えられる。

 一方で、あらゆるサービス産業において、お客様に末永くサービスをご利用頂くため、お客様の真のニーズや嗜好を深く知るための「お客様との接点(タッチポイント)」の重要性が増しているが、ラストワンマイルの高度化を図る裏側では、物流事業者がお客様とのタッチポイントをいかに維持/拡大して事業に活用すべきか、という課題も存在している。お客様とのリアル・デジタルにおける様々なタッチポイントやそこから得られる情報は、新商品/サービス開発といった事業戦略の舵取りを行う上での肝となる要素となってきている。そのため、タッチポイントを確保し、お客様を深く知るための情報をいかに取得して分析・活用するか、また、その活動サイクルを持続するノウハウならびに組織体制の重要性が今後一層増すものと考えている。そのお客様タッチポイントを活用したCX(Customer Experience;顧客経験価値)向上として、KDDIデジタルデザインではauショップ店頭の高度化に取り組んできた。これはauショップ店頭に配備されるタブレットに対し、お客様の契約情報や行動履歴を基に推計し、お客様一人一人に適したご提案内容が表示されるデータ活用の仕組みで、これにより従来よりもお客様が納得してご契約頂ける接客が可能となり、同時に業務効率化やスタッフの満足度の向上を実現している。

 KDDIデジタルデザインでは企業の先にいるお客様へのCX向上の取組みによって、お客様対応の高度化を実現する様々な手法やテクノロジー、そして、活動を持続するためのノウハウを蓄積してきている。今後、KDDIデジタルデザインはこのノウハウを生かしながら、これまでアナログだった物流現場業務のデジタル化とその活用の支援を行うとともに、物流事業者のタッチポイントの整理ならびに再構築という観点から、物流現場の変革と課題を解決する糸口を探っていきたい。