レポート

Digital Transformation(DX)における落とし穴

2019/05/14

執行役員 西野 貴弘

1 Digital Transformation(DX)は何だったのか
 2018年はDX元年だったと言えるのではないかと思う。サービスの提供者だけでなく、ビジネスを担う多くの事業者が“デジタル”を用いて変革しなければという趣旨のことを方々で叫んでいた。
 ではDXとは何か?サービス提供者なりの定義によってそれぞれの解釈がされており、システム導入において各社が持つ新しい技術を導入することをデジタル化と呼ぶようだが、サービス利用者からすると「これがDXなのだろうか?」と感じていらっしゃる方も多いのではないだろうか。
 筆者はどのサービスもDXに貢献していると言って間違いではないと考えている。あえてわかりやすく言うならば、“DXはこれまで多くの事業者が実施してきた、テクノロジーを活用した改革と本質的には同義”である。では何が違っているのか?
シンプルに言えば、
“技術の進展によって迅速かつ安価に高度な事ができるようになった”ことだ。
 以前は、システムのデータ収集・入力は人がキーボードで入力する、せいぜいOCRで読み取る程度だったのが、センサーやモバイルによって様々なデータが安価かつ大量にとることができるようになった。大量に収集したデータは容量を見積もり、高価なハードディスクを購入して保守をする必要はなく、クラウドに放り込んでおけばよい。さらには、貯められたビックデータに対してAIやAnalyticsを活用することでデータの価値は飛躍的に増大した。新たに生み出された価値はディスプレイではなく、体験(わかりやすいものではVR)という形で出力されるようになった。
 以前は一部のアーリープレイヤーのみが取り組んでいたこれらデジタルテクノロジーのビジネス活用が、2018年はアーリーマジョリティー層も取り組み始めた年なのだったと思う。

2 デジタルテクノロジーが与えたインパクト
 この技術の進展が経営にどのようなインパクトを与えたのか。これまでは情報システム部門という専門家集団にIT活用に関する助言をもらいながら、リスクを軽減しつつ慎重にプロジェクトを推進する必要があった。それが、安価に迅速に高度なことができるようになったため、情報システム部門に依頼しなくても、事業部門側で推進できる部分が大きくなったと言える。多大な投資をせずとも、“ちょっと試しにやってみる”ことが可能になったのである。
 事業部門で思いついたちょっとしたビジネスアイデアや、業務の効率化にデジタルテクノロジーを活用してみて、うまく行けば大成功。うまく行かなくても従来に比べれば損失は小さい。これが、2018年に「とりあえず“デジタル”をやってみよう」という流れを作ったのではないだろうか。

3 DX推進における落とし穴
 その流れで、とりあえず技術を調べたり、データを集める方法を考えたりするのだが、何をして良いのかわからない、とりあえずPoC(Proof of Concept)をやってみるがそこで活動は終わる、ということが散見されたのも事実だと思う。これは“ちょっと試しにやってみる”ができるようになったため、「デジタルを使って何を達成すべきか」という大義や目的の設定が不十分なまま取り組み始めたことに起因する。(あえて、設定する事なく、社員を“デジタル”というものに触れさせて文化や雰囲気を変えるという取り組みをされた会社もあったようだが。)
 デジタルの適用領域は既存製品・サービス、オペレーションのデジタル化や新規事業創出などいくつかある。重要なのは“デジタル化した後に何を達成したいのか?”ということだ。
 
 デジタルテクノロジーはその変革を支える要素であり、従の存在であることを念頭にビジネス変革を推進することがDXの成功要因と言えよう。