レポート

DXを支えるイベント・ドリブン型システムと開発プラットフォーム

2019/06/18

システム開発部 シニア ソリューション アーキテクト 手島 史暁

 現在、我々が利用するシステムは、リクエストレスポンス型と呼ばれるものが主流である。発生したデータをデータベースに格納し、ユーザからのリクエストに応じて、データベースから該当のデータを探してきて画面に返却する。いわゆるプル型の仕組みと言える。以前よりビッグデータ等、データを活用したビジネスITの重要性は広く認知されており、ユーザの解約予兆をとらえたレコメンドシステム等も作られるようになったが、これらも基本的には、従来のリクエストレスポンス型システムとして構築されている。

 しかし、IoTセンサーの高度化等、テクノロジーの進化により、データを活用したリアルタイムなアクションが可能になってきた。例えば、工場の機械の故障予兆を回転数や温度情報を基に監視し、閾値を越えたタイミングですぐに交換すれば、故障によって生産がストップする時間を最小限にすることができる。また、顔認証カメラによる不審者監視システムは、マスタに登録されていない人が建物に入ってきた段階で、最寄りの警備員を向かわせることも可能になる。このような、特定のデータ(=イベント)を契機に稼働するシステムを、イベント・ドリブン型システムと呼ぶ。プッシュ型の仕組みとも言えるかもしれない。Uberが提供するユーザと車の位置情報を利用した配車管理システムもイベント情報を上手く活用しており、デジタルトランスフォーメーションの好事例となっている。

 イベント・ドリブン型システムを構築するには、従来の開発手法では難しい点がいくつかある。まず、複数の情報を扱う場合だ。一つの情報で稼働するシステムを作るのは、従来のやり方でもそんなに問題は生じない。しかし、例えば、前述の顔認証カメラを使ったシステムの場合、カメラ情報の他に、社員マスタ等のレガシーシステムとの連携も必要になる。さらに、顔認証技術も外部APIを利用することがあるかもしれない。一般的に、外部連携を一つずつ開発するのは非常に大変だ。また、一度開発したら終わり、ということもあまりない。作りながら拡張・改善することが必要で、アジャイル的な開発が求められる。

 KDDIデジタルデザインではこれらの課題を解決するため、VANTIQ(※1)の評価を行い、実際に、『位置情報を活用し、現在地と目的地を地図上に描画した上で、目的地までの距離や推定残り時間を計測。到着直前にはユーザにSMSで通知を送る』というアプリケーションを開発した。位置情報の取得にはKDDIの『ここルート(※2)』と呼ばれるサービスを利用。データ転送機能が用意されているため、VANTIQ側のAPIを叩くことで位置情報データの連携を実現できた。VANTIQのGUIツールを利用して簡単な画面や処理を開発し、目的地までの距離や推定残り時間についてはGoogle Maps APIを利用、SMSはTwilio(※3)と連携して実装した。VANTIQには豊富なアダプターが用意されているため、簡単に外部サービスと接続することができた。

 VANTIQを活用することで、リアルタイムにアクション可能なシステムを素早く作ることができるようになった。基本的なシステムであればVANTIQだけで構築できる上に、センサーや外部APIの追加等の拡張性も高く、新規ビジネスのスモールスタートが可能である。また、アジャイル開発にも適した高生産性プラットフォームのため、素早いPoCの立上げも実現できる。イベント・ドリブン型システムはIoTに限るものではなく、株価情報や、駐車場の車の出入り情報等、データ変化を捉えたシステム開発に強みを発揮する。イベント・ドリブンの思想を理解し、それを支える開発プラットフォームであるVANTIQを有効に活用できるかどうかは、DX時代のシステム開発において重要な要素になっていくだろう。

※1
イベント・ドリブン型高生産アプリケーション開発プラットフォーム
データ収集、外部データとの連携・分析、アクション送信までを、単一プラットフォーム上で構築可能

※2
「KDDI IoTクラウド Standard」に、GPSと通信機能を搭載したセンサーをセットにしたパッケージ商品
センサーデバイスで位置情報を取得し、地図への描画や外部システムへのデータ転送機能等も提供

※3
音声通話、SMS、ビデオ等をアプリケーションに組み込めるクラウドAPIサービス